国産クワガタ類全般

 

飼育に必要な知識

種類

飼育品は羽化日があるが,自然採集では新成虫であるか見極めないと寿命を予測できない。

オオクワガタ

    1〜3年位生き、標高の低い温暖な山地に生息。

ヒラタククワガタ

    1〜2年位生き、標高の低い平地に生息

コクワ・スジクワガタ

1年間生きると言っても越冬を1回するだけで翌年の春に死んでしまいます。

標高の高いところから低いところまで全般的に生息

アカアシクワガタ

コクワガタと同じように1回の越冬をし、標高の高い山地に生息

ノコギリクワガタ

その年の夏、1シーズン2ヶ月ほど生き、標高の低い平地を中心に標高の高いところまで全般的に生息

ミヤマクワガタ

1シーズン2ヶ月ほど生き、標高の高い山地に生息

亜種

ある種類の生息分布地の最南端から南、多くは八丈島などの離島に生息し学術指定されたもの。

よく見るものより、大型だったりアゴや体の色形が微妙に違う。

 

 

成長サイクルの種類

2年1越型

2年間の幼虫期を経て蛹になり、羽化後成虫になってもそのまま蛹室内で越冬し、夏ごろ野外に出る物

1年1越型

1年間の幼虫期を経て蛹になり、羽化後成虫になってもそのまま蛹室内で越冬し、

夏ごろ野外に出てくる物

2年1化型

2年間の幼虫期を経て蛹になり、春から初夏に羽化して野外に出てくる物

1年1化型

1年間の幼虫期を経て蛹になり、春から初夏に羽化して野外に出てくる物

 

 

上記のサイクルでもその年の気候によって変体サイクルにずれが生じ、野外に出てくるのがずれたりします。

しかし、ブリードしている人達のほとんどは、一定の温度(25度位)を保つことでサイクルが1年短縮し、

早い物では6ヶ月ぐらいで卵から成虫まで育てる人もいます。

 

1年サイクルと2年サイクルの物では、2年サイクルのものにオスが多く、

1年多く餌をとるので大きさも期待できるが必ずしも大きいとは言い切れません。

 

また、温度を一定にかけていてもまれに2年サイクルの物が出ますが、

何が原因でサイクルが分かれるのかわかっていないようです。

ただ、繁殖時期をずらす事で子孫繁栄が有効になるようにサイクルが分かれるのだと

考えられているようです。

 

変体サイクル

 

産卵場所の違い

オオクワ・ヒラタ・コク・スジ・アカアシ

主に朽木内の自分で作った坑道に産み、朽木近くのオガにも産む事がある

ノコギリ

主に腐葉土やオガに生み、朽木があればその中に産む。

新しいオガより劣化した腐葉土に近いものの方が率はよく成長も良いようである

ミヤマ

主に腐葉土とオガの混じった土の朽木近くの土に産む。

産卵環境の難しい類で産卵しても孵化させるのが難しく、

幼虫飼育でも環境に敏感で3齢幼虫にいたるまで気が抜けない

 

好む温湿度

オオクワ・ヒラタ・ノコギリ・コク

0℃〜25

ミヤマ・アカアシクワガタ・スジクワガタ

18℃〜25

 

湿度は、原木自体が含んでいる水分量で、マットに与える水分はこれを基準として硬く握って

団子になる程度などと表現し、これをここでは「普通」とし軽く握って団子ができ硬く握って

水がにじまない程度を「多い」とします。

マット粒子の大きさによって保水量が変わるので注意してください。

また、感覚的なのでよくわからない人は何リットルのマットに何リットルの水といったデーターを

取るとよいです。

オオクワ・ヒラタ・コク

普通

ノコギリ・ミヤマ・アカアシクワガタ・スジクワガタ

多い

 

 

長生きさせるには

 

生息している自然環境に近づければよいのですが、実際の自然環境では気候や気温の変化、害敵、

えさの豊富さなど生体の体力を消耗させる原因が無数あるので寿命を全うするものは少ない

と考えるべきだと思います。

そこで、飼育する場合は生体の体力消耗を少なくし、生体の好む環境で変化のない環境を

作らなければなりません。

* 個別に飼育し、動き回りや立ち上がり・転倒死を防ぐためスペースを考えた容器で飼育。

* 温度やマットの湿度を一定に保ち、光をさえぎって飼育。

     (集光性のある生体なので、光を求めて無駄な体力消耗をするため)

* 交尾をさせない。

(何年も生きる生体でも交尾の回数によっては1シーズンで生き絶える生体もいる)

 

 

飼育

飼育に必要なもの

 

生態の種類や数にあった容器(プラケースが一般的)

マット(クヌギなど広葉樹のオガクズ発酵済みのもの)

朽木23本(足場や隠れ場所を作るのと産卵木として埋め込むもの)ここでは産卵木のこと

昆虫ゼリー(管理が楽でマットを汚しにくいので一押し)

霧吹き

千枚通し(コンパスの針などで代用してもよい)

 

以上基本的なものをあげましたが、飼育上問題がなければ他のもので代用してコストのかからない

飼育を研究してください。

 

 

セット

朽木は、セット前日に3時間〜1日水の中に静めるように浸しておき、セット3時間前に

取り出し水切りしておきます。

マットをケースの1/3から半分ぐらい(最低でも5センチはほしい)を用意し、

適量の加湿をしてケースにいれます。

それから朽木をマットに半分埋まるようにセットして昆虫ゼリーをセットします。

 

 

 

 

ゼリーは朽木とケースの間にセットしますが、ゼリーの蓋を全部取らないでカッターで

蓋を十字に切ると傷みが少なくマットを汚しにくいのでマットに植え込んでもよいです。

また、ゼリーが足場にもなり転倒死を防ぎます。

 

 

 

これで生体を入れ、サランラップなどでケースとケースの蓋の間に貼るようにはさみ穴をあけます。

こうする事でコバエなどの外からの虫を防ぎ、ケース内の湿度を一定に保ちますが

結露と乾きすぎ・酸欠にならないように穴の数で調整します。

 

 

以上で基本的なセッティングは完成ですが、これは同じ種類の生体1ペア

もしくは同種のオス1・メス2ぐらいのセットなので、生体数の多い場合や異種と混ぜて飼育する場合

ケースの大きさ・朽木の数・マットの量・餌場の数を拡張する必要があります。

また、オオクワ・ヒラタは大型で力が強いのでマットが深すぎるとケースの蓋に穴を空けたり、

蓋を押し上げて脱走したり、蓋の網にあごがひっかかって死んだりするので生体の体長に合わせる

必要があり、ミヤマのように転倒しやすい生体ではケースギリギリまでマットを入れ

立ち上がりによる転倒を防ぐ必要があります。

 

 マットの深さ調整

 

生体数の多い場合、又は、違う種類の生体を混ぜて飼育する場合

見た目の迫力はありますが生体間の争いが絶えず長寿は期待できないし、繁殖も期待できない。

混合の場合で、もし幼虫がいてもどの種のものなのか判断できない。

 

生体の大きさにもよるが、多くても60センチの水槽に12匹程度を基準に大き目のケースを

使いましょう。

基本のセットより朽木を増やし、小枝や樹皮・クヌギの葉などを入れ隠れ場所が多くできるように

気をつけながら、見栄えよくデコレーションしましょう。また、これが足場となり転倒を防ぎます。

えさの場所を増やすことで一つのえさに対して生体の密集を減らし、えさ場の争いを避けます。

 

 

 

繁殖を目的とした場合

基本のセットでペアリングと交尾をさせます。

ペアリングのときに生体間の愛称があるのでメスが交尾を拒否し続けるようであれば

別のメスに交換します。そのままだとオスに殺されます。

尚、大きなオスをかければ大きな子孫が取れると思っている人が多いが、

実際には形体遺伝はオスの遺伝が強いが、メスのサイズが大きい方が大型産出は有利です。

大きいメスは大きい卵を産み、幼虫も大きく栄養価の高いえさを与えてより大きくなると言う訳です。

オスもメス大きければよいのですが個体差のあるペアリングは、交尾成功率を下げるので

成功率の高い小さいオスを使うことをお勧めします。

 

天然のメスは、捕まえたときにはすでに交尾を済ましているものが多いのでペアリングしなくても

産卵するケースが多いです。

一度交尾をしたメスは交尾を拒否します。

 

交尾後、産卵用の別のケースにメスだけを移動します

オスがいると幾度も交尾を求めメスが落ち着いて産卵できないからです。

 

 

 

 

産卵用のセットは,マットを15センチ位硬く引き詰め産卵木をセットしマットを詰めますが、

最初程硬く詰める必要はないです。

 

硬く詰める 産卵木セット後、マットを詰める

 

繁殖

種類によって繁殖の難しいものがあります。自然界では好む環境の違いでうまく住み分けられていますが、

その違いが繁殖を難しくしているのではないかと思われます。

オオクワやヒラタは、ブームも手伝って繁殖技術も進み繁殖や飼育が容易にできるようになりましたが、

身近な種類はまだまだわかっていることは少なく意図的に繁殖させようとすると意外と

難しかったりします。

そこで、前で説明した繁殖用のセットでもよいのですが、より成功率を高めるポイントをあげてみます。

オオクワ

朽木は寝かしてマットから出るか出ないか位の埋め込みでセットし、いかにも並べましたというより

自然な感じでセットする。朽木は硬め

ヒラタ

朽木を完全に埋め込むセットする。マットの環境があえばマットにも産卵。

朽木は普通かやや柔らかめ

ノコギリ

マットは新しいものでなく、劣化した使い古しのがよく少し腐葉土を混ぜると効果的。

マットの湿度は多めでセットする。朽木なしでもマットに産むが入れた方が多産で、

朽木はやや柔らかめで,完全に埋め込んでも半埋め込みでも良い。

ミヤマ

マットに腐葉土を1:2の割合で混ぜて水分多めセットする。朽木は切り株のように縦して

少し出るように埋め込む。

基本的にマット産みなので朽木はどんなものでも良いが,広範囲で産卵するので広いスペースと

太めの産卵木を多目の本数でセットするのが良い

アカアシ

マットは,微粒子の新しいマットで水分多目。朽木は柔らかめのもの使い、埋め込む物と縦にして

出るように埋め込む物をセットすると良い。手に入るのであれば川柳・エノキのマットや朽木を

使うと効果的。

    

全種類に言えますがマットや朽木の材質を変えると良いときもあります。しかし、市販されていない物

もあるので、自分で手に入れなければなりません。

    

繁殖前・中・後のメスには動物性たんぱく質入りのゼリーを与えます。

 

 

 

幼虫の取り出し

メスがマットにもぐったまま出てこなくなったら産卵は成功したと思われます。

 

2週間程して朽木をかじったりマットの中を動いていないようであれば

産卵セットをやり直すかセットを換えてください。

また、交尾しても産卵期にいたらないメスはなかなか産まないのでよく観察してください。

 

1〜2ヶ月ほどするとマットの中を動く初齢幼虫が見られるようになります。

初齢幼虫は、抵抗力がないので1cm位になってから取り出します。

取り出し時にメスが生きているようなら再度セットします。

 

また、朽木は木目に沿って慎重に割っていきます。

朽木の中に幼虫がいるかは食痕があるかないかで判断します。

 

オオクワ・ヒラタ・コクワ・アカアシ・スジクワは、朽木をかじりだしたのを目安に

2ヶ月たったらメスを取り出し、新しく繁殖セットした別のケースに移します。

(メスが坑道を作るときに産卵した卵と幼虫をつぶしたり食べてしまうのを防ぐのと

1回の産卵期で何回かに分けて産む事があるから)

 

メスを取り出したケースはそのまま管理し1ヵ月後朽木を割り取り出します。

 

また、割ったあとの朽木とマットにはまだ取り出しきれないものがいる可能性があるので、

さらに1ヶ月間管理します。

 

取り出した幼虫を個別にケースに分けて入れます。

 

 

 

幼虫は絶対素手で触らないように!!

 

 

 

幼虫飼育のケース

プラケースミニ150200円)   オオクワ用菌糸瓶200300円)0.52リットル

      

 

インスタントコーヒーの瓶     ジャム・はちみつの瓶(ビンのみ80200円、食後のもはただ)

   

 

 

パック100円〜)       イクラカップ・チェリーカップと言われるクリアカップ系

            1個当り1050円、ただし50100個セット売り)80ml〜860ml

    

などと色々あるので、生体の大きさやコスト・管理場所の条件にあったものを選んでください。

条件的には瓶系のものがお勧めです。

 

 

幼虫飼育

オオクワ

菌糸ビンによるものが有名で、菌糸が生体の大きさに影響があるのが分かったのは最近。

その他に,菌糸ブロックに幼虫をもぐらせケースで飼育する菌床飼育と飼育材に入れる材飼育がある。

また、スタンダードな発酵マットによる飼育もあるが途中での飼育方法の変更はできない。

ヒラタ

オオクワ同様の飼育が可能だが、オオクワほどサイズに効果が期待できなくコストがかかるので

発酵マットの飼育が多い。

その他

サイズに効果的な飼育は、まだ見つかっていませんので前に説明した産卵時に好む環境条件を

みたすマットで飼育するか飼育材での材飼育。

(飼育材に穴を空けて幼虫を入れ自然に近い状態で管理する飼育法)

     

セット

大きなビンは3齢幼虫になるまでは必要なく小さいのを使い成長に合わせて大きくして行き、

マットは通常よりミキサーやフードプロセッサーなどで細かくした物の方がよい。

3齢幼虫になったらマットも通常の荒い粒子に戻します。

 

マットをビンの八文目ほど詰める。詰め方の硬さは固めがよいが、この詰め方と水分量によって

マットの劣化の速さや交換のサイクル・回数、生体の成長に影響があるため人によりさまざまです。

 

残りの14に、取り出した幼虫のいたマットを詰め、幼虫が入るぐらいの穴をあけ取り出した

幼虫を入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酸欠を防ぐためドリルで穴をあけ、和紙・障子紙・キッチンペーパーをはさむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

コーヒーなどのキャップは、ここのシール材を外すとよい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


マットの交換

菌糸での飼育は、菌糸の白い部分が1/3ぐらいになったら交換すると良い。

また、食べ方が悪い場合や菌糸の劣化が進んだときも交換を心掛けたい。

いつも新鮮で栄養のある餌を与えたいものである。

発酵マットでの飼育は、マットの粒子が細かいとわかりづらいが粒子のなくなり方や劣化の

仕方で判断し、観察をしながらよく育つように早めの交換をしたい。(毎2ヶ月〜3ヶ月位)

 

1匹の幼虫が成虫になるまでに食べるマットの量は、サイズなどの個体差によるが1〜6リットル位

だと思っていればいいだろう。

 

交換時には、交換するマットと新しいマットの温度を合わせて、周りの温度が低めのところで

行うようにしたい。

(生体に与える環境変化を最小限にするためと温度加算による変体サイクルの早期化を防ぐため)

 

そして、新しいマットに前の食べ残しのマットを1/4位混ぜて入れるようにし、

交換というより補充する感じで行いたい。

 

 

 

 

 

 

古いマット

 

 

 

新しいマット

 

 

 

生体のサイズは3齢幼虫になってしばらくは成長しますが、やはりその前までの段階で餌環境が関係あり、

ここをまめに手をかけることによってよく食べてもらい大きくなって欲しいものです。

 

 

3齢幼虫の色が黄色っぽくなったら

蛹化が近いしるしです。えさも食べなくなるのでマットの交換を止めマットの湿気を少しずつ

減らしていき適度な湿気を保ちます。

 

しばらくすると、フンや口から出した液をマットと混ぜて周りのマットを体で固め始めます。

これが蛹室というさなぎになるための繭みたいな部屋で横方向に作ります。

 

蛹室ができる頃には幼虫は縮んでシワシワになりあまり動かなくなる。

これが前蛹といわれる状態で2〜3週間後位でさなぎになる。

 

前蛹から羽化まで2ヶ月位かかりますが、この時期は振動・ビンの傾きや向きが羽化不全や生死に

大きく影響する敏感な時期なので慎重に管理し、羽化後からだの色が黒くなるまで丁重に管理しましょう。

羽化が成功したかどうかは蛹室内がマットで見えなくなっていたら成功だと言っていいでしょう。

しかし、カビなどが発生していたら残念ながら失敗です。

 

蛹室作り

前蛹

蛹化

1週間

23週間

羽化直前

 

 

蛹室の湿気が多かったり管理温度が高いと、羽化のときに羽がきちんと閉じなかったり

ヨレヨレになったりするので気をつけます。

 

 

羽化後

体の色が黒くなったらマットを崩して取り出すか出てくるまで待ちます。

最低でも2週間はそのままにして置きましょう。

取り出した成虫は、しばらく(13ヶ月間)えさを食べないので様子を見ながら与えます。

36ヶ月以上たたないと繁殖能力はありません。

ただし、1シーズン種は必ずしもこれにあてはまらない。

 

 

最後に

私が子供の頃は、クヌギの木に行けば2030匹は簡単に捕れたものですが最近では

なかなか捕れなくなりました。

彼らの数より彼らを捕まえに来る私たち人間の方が増え、地球温暖化も手伝って減少しつつある

彼らと彼らのテリトリーに追打ちをかけてしまっています。

 

また、彼らも必死で餌場の木の種類を換え、体のサイズを小さく作ることで狭くなったテリトリーで

生き続けようとしています。

そんな彼たちに目を向けたのは最近で、子供の頃には思いもしなかった彼らの事を知って驚き、

彼らと同じ形の世界の仲間や見たこともない彼らの仲間を見て地動説などを思い浮かべ、

彼らの生態系の深さを感じました。

ここに記されたものは、そんな彼らの一部でしかありません。彼らの飼育をすることで

子供たちを中心に人や自然がより豊かになればと願っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2003/12/07 クワガタ類全般 補足へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トップに戻る

inserted by FC2 system