オオクワガタについて(神奈川県)

オオクワガタの生息地

1988年 横須賀市(子安の里)

1990年 鎌倉市・横須賀市

1991年 平塚市

1995年 平塚市・秦野市(震生湖)

と過去に記録が残されており平塚市においては、本種が相次いで採集された為、本種の確実な生息地として正式に発表されています。(神奈川自然誌資料174344Mar.1996

 

現在の生息地

神奈川自然誌資料174344Mar.1996が公表された時点で、横須賀市(子安の里)

周辺は、湘南国際村として開発が進み生息環境が破壊され、三浦半島周辺地域での生存の可能性は低いと考えられ、秦野盆地を中心とする小田原東部・二宮・大磯・中井・秦野・平塚西部・伊勢原・厚木西部を生息環境が最も適した地域とされていました。

また、この地域についても開発による絶滅の危険性を訴えていました。

 

(当方の見解)

当方の知る限りでは、この他小田原西部周辺で採集が確認されていましたが、現在では

ありません。

また、丹沢や箱根を中心とする地域で過去に採集例を聞いた事がありません。

オオクワを見た事がない為か、地域によっては大形(60oを超える)ヒラタクワガタを

昔からオオクワガタと認識していた習慣がある事もわかりました。

それほど、縁遠いクワガタだったと考えられます。

現在でもヒラタクワガタの生息地域でない為か,大型のコクワガタをヒラタだと思っている子供たちを見ているとあるんだな〜と思います。

 

現在はオオクワガタの放虫問題を経て、各地で採集例があり、生息地域以外での採集例もあります。

生息地においても、本種か他県産か交雑か見極めが不可能に近いので、少し難しいことになっています。これは、他県でも同様であると考えられます。

更に、外国産との交雑問題まで起きてしまい、その生体が野外に放たれたとしたら?

益々、難しくなります。

 

本種が生存していて欲しいと願います。

 

形態の特徴(神奈川自然誌資料174344Mar1996より)

♂の大歯型の形状は、地理的に近い甲府盆地周辺の個体群に近く、関西以南のものとは

明らかに異なり、直線的で弱い曲がりを見せる。

また、個体によっては全体の体形から見て、大顎の短いものがあるが、甲府盆地周辺のものと明らかな違いと考えられる。

♀は他県のものとの違いはないようである。

 

(当方の見解)

この特徴は、天然生体の特徴であり、菌糸瓶飼育やMat飼育下ではその特徴が現れ難くなるものと推測できます。

天然生体の特徴をより近く再現するには、カワラ材による材飼育が求められるようである。

また、長い年月をかけて各生息域の環境下で形態固定していたオオクワガタの地域別個体差の特徴も同じ飼育環境下で累代飼育される為、その特徴が表れ難くなるのも納得が出来ます。

 

神奈川県立生命の星・地球博物館の担当者に質問しました。

神奈川自然誌資料174344Mar1996の作成に携わり、標本個体の寄贈資料に担当された

学芸員の方にお答えして頂きました。

この場を借りてお礼を申し上げます。

参考にして下さい。

 

質問事項1 1995年以降の神奈川県下でのオオクワガタの採集記録は?

    A 最近は正式な報告はされてないと思いますが、採集例はかなりあるように聞

いています。

 

質問事項2 現在のオオクワガタ事情を生物学的な考えと対処は?

    A もはや、自然の状態を表しているとは思えません。ペット化の進行とともに

地域の自然の歴史がメチャメチャにされてしまった、非常に悲しい事例だと

思います。放虫をしない事は勿論、出来れば回収も必要と思います。

 

質問事項3 国内における産地別個体差の特徴

    A 色々と言われていますが、元々広く分布したオオクワガタにその様な識別点

(確実なもの)はないだろうと思います。多少の差は存在しても個体異変の

範疇でしょう。

 

質問事項4 外来種交雑個体の判別について

    A これはやはり遺伝子を調べるしかないでしょう。怪しい個体であれば、

国立環境研究所の五箇さんなどにお送りして調べて頂いては

如何でしょうか?

 

ちょっと!放虫問題についてとその他の問題

1999年頃からこの問題が問い沙汰されて来たようです。

当初、オオクワガタは非常に採集や飼育が困難な生体で、黒いダイヤと呼ばれるほど

とても高価な生体でした。

この頃にも、自分の家の裏山でオオクワが採れたらと山に放している方がいると聞いています。

また、ヒラタケ菌糸がオオクワガタの飼育に適している事が知られ第一次オオクワブームが発生し、以前より飼育が容易になりより多くの方が飼育されるようになりました。

この頃から激しくなってきたように思います。

そして、悪質な放虫が多くなりました。

偶然、放虫者に遭遇し理由を尋ねると、「オオクワがいない所に放して、生息の有無を知らない採集者が採集に喜び馬鹿騒ぎ(ネット公開とか)しているのを観るのが面白い」と言う事でした。(採集ブームの影響か?)

絶句です。

現在ではより深刻で、オオクワガタに限らず外国産まで至ります。

木の根元に台湾オオクワや中国ホーペイの死骸を潜ましたりする行為も発見しました。

また、手軽に入手出来るようになり、飼育者の層も広がったのを背景に、脱走や飼育放棄

生体の飼育知識不足から野外に放たれるケースが増え、放虫個体と思われる個体の発見が非常に多くなりました。

とても残念に思います。また、災厄の状態です。

 

元々、その地域に生息していた他のクワガタやカブトムシに及ぼす影響は交雑に留まらず、

生息弱者を絶滅に追い込む恐れもあります。

現在は、本来そこに生息しているクワガタやカブトムシの生息環境が充分とは言えません。

当然、似通った繁殖場所を好むものは繁殖場所の争いが起き、幼虫間でも起きると考えられます。その結果、絶滅へのカウントダウンが・・・

環境が豊かであるならば住み分けも出来るのでしょうが、気象異常などで生態系や生息分布が変わりつつある現在は何が起きるか予想がつきません。

彼等にとっても生息危機の上の非常事態となる事は間違いないでしょう。

(開発による生息地の圧迫・採集圧による減少・異常気象・雑木林の減少と取巻く生存環境は厳しい。)

 

一見、同じように見えるクワガタでも種によっては、生息地独特の体形を持つものも居ますから、どんなクワガタ・カブトでも放虫はやめましょう。

また、計画的飼育・繁殖を心がけましょう。

秋口にかわいそうだからって山に逃がしたら駄目ですよ!最後まで飼育して下さい。

飼育法がわからない場合は購入時にお店に尋ねましょう!

交雑問題では同属種の外国産と国産との混血が問題で、その混血種が野外に放たれたら

どうなるかおわかりだと思います。

 

また、採集についてもマナーの悪化を感じます。これは新規参入してきたあまり自然との付き合いを知らない人が増えてきた為なのかわかりませんが、各地で地主さんとトラブルになっています。さらに、子供たちも親の車に乗ってくる時代ですので生息地の荒れ方が

深刻化しています。近年の採集圧はちょっと目に余ります。

どんなにマナー良くしても生息地で「いかに多くの人がやるかどうか」に左右される場合があります。そこの採集ポイントに来ているのは自分だけではない事を理解しなければならないでしょう。

孫にと年配者の方が昔取った何とかで、採集をされる方も見かけますが、その方が採集されていた時代と周りを取巻く事情がかなり違いますので注意が必要となります。

採集においては、マナーを守るのは勿論の事ですが、自然や生態系・地主さんや生息地に対しても配慮が必要な時代になってきたように感じます。

採集地の立入りには充分な注意が必要です。

また、採集にあたり餌トラップを仕掛けた場合は、必ずトラップを回収し根元を掘り起こした場合は、埋め戻す。

ナタなどで樹皮に傷をつけたり、剥く方がいますが、樹木を痛めるだけなのでやめましょう。必ずしも樹液が出るとは限りませんし、出たとしても樹液が発酵しなければクワガタは来ません。更に最近では外敵の的になりやすい為か幹部の樹液には来ませんし、

水だけでもかなりの間、生きられることを知っておきましょう。

 

こうした行為は、自然林としてのクヌギは考え難いことから所有物(私物)と考えるべきで、行きすぎた行為は個人財産の侵犯や自然破壊に繋がる行為である事を認識しておかなければなりません。

 

二次問題として掲げられないよう願いたいものです。

 

これからのオオクワガタ

有名ブリーダのオオクワや妙な名前の付いたオオクワ・異常な体形のオオクワガタ・目の色が変なオオクワガタ・普通のオオクワガタと出回っています。

また、産地・累代・血統など拘りも色々です。

ですが、ブランド系オオクワガタと普通のオオクワガタのような気がします。

普通のオオクワガタでサイズ問わず体形のバランスが良いものがいいと個人的には思います。その体形のバランスの好き好きも色々ですが!

ご自身が、気に入ったオオクワを飼育されれば良いのではないでしょうか?

それがブランド系やアイ系であっても!

どんなオオクワでもその生体情報に納得して飼育できればOK!

いいな〜って思ったのが、誰が何と言っても1番なのですから。

 

飼育も様々に変化していくと思われますが、自分なりの生体に接する考え方を持ちつつ、

オオクワガタ事情を理解し、飼育にあたる事をお勧めします。

繁殖にあたっては、おかしな個体の産出をしないようにしましょう。

その個体がかわいそうなので・・・

 

誰もが安心してオオクワガタ飼育に接する事が出来るよう願っています。

 

 

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